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ミレニアム三部作(スティーグ・ラーソン)を読む

ミレニアムシリーズ(スティーグ・ラーソン)

3月に3巻6冊を一気に読んだ。
いま、再び書物を開いてみて、とっつきに難儀したことを思い出した。まず登場人物一覧が3ページにわたるほどに多く、見開き2ページの家系図まで載っている。読みながら、この人は誰だっけ、と再々一覧表を見る。(そのために別刷りで三つ折りの人物一覧と家系図と地図のしおりが付いている!笑)。さらに、暴行シーンがかなり厳しい。それでも一気に読んでしまった。

全巻を貫くテーマはこうだ、たとえば第1巻『ドラゴン・タトゥーの女』の各部の扉裏には次のように記されている。
第1部「スウェーデンでは女性の18パーセントが男の脅迫された経験を持つ。」
第2部「スウェーデンでは女性の46パーセントが男性に暴力をふるわれた経験を持つ。」
第3部「スウェーデンでは女性の13パーセントが、性的パートナー以外の人物から深刻な性的暴行を受けた経験を有する。」
第4部「スウェーデンでは、性的暴行を受けた女性のうち92パーセントが、 警察に被害届を出していない。」

スウェーデンのミステリーは、マイ・シューヴァルとペール・ヴァールーの「マルティン・ベックシリーズ」、ヘニング・マンケルの「クルト・ヴァランダーシリーズ」と、このミレニアムしか読んだことはないが、いずれもその時代背景を色濃く反映していて社会学のケーススタディのようでさえある。マルティン・ベックの10年間は、「古き良き時代」が近代組織に生まれ変わる10年間で、それを見事に活写しきっている。マンケルの作品にはグローバル化と国民国家のせめぎ合いが副テーマになっているし、ミレニアムでは(かのスウェーデンにおいてすら今なお問題となっている)女性への憎悪と虐待が全体を通底するテーマとなっている。


読み終えて、アマゾンをさまよっていると同じスウェーデンのミステリー、ラーシュ・ケプレルという人の作品を勧められる。はじめてみる名前で、検索してみるとアレクサンデル・アンドリルとアレクサンドラ・コエーリョ・アンドリル夫妻の共有筆名だというのだ。
ペール・ヴァールーとマイ・シューヴァルのマルティンベックシリーズも夫婦での共同執筆だったし、ミレニアムもスティーグ・ラーソンとパートナーのエヴァ・ガブリエルソンとの共同執筆だ。スウェーデンではこういうことがままあるのかしら。



「ドラゴン・タトゥーの女」は早稲田松竹で5月にハリウッド版が上映されるようだ。できればスウェーデン版で見てみたい気がする。昨夏AXNミステリーで3作一挙上映と予告していたが、それどころではなく過ごしてしまった。



追記
ラーシュ・ケプレル『催眠』は好みではなかった。異様に詳細なディテイルの集積で、猟奇的なB級ハリウッド映画でも見せられているような気がした。

by e3eiei | 2012-04-22 00:16 | 見聞 | Trackback | Comments(0)
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