カウリスマキの作品をみる

昨年まったくの衝動買いで「キートス!! カウリスマキ」のボックスを買ってしまった。

それで、年末年始にかけてひとりで「キートス!カウリスマキ」を開催した。

「カラマリ・ユニオン」1985年。監督・脚本:アキ・カウリスマキ。15人のフランクが「エイラ」を目指し次々と死んでいく。出演:マッティ・ペロンパー 、サカリ・クオスマネンほか。霊柩車のドライバーとしてカウリスマキ(若くてスリムでいけめん!)も出演している。途中で寝てしまった。
これがレニングラードカウボーイズの系統になるんだなあ。
カウリスマキの映画は船出のシーンで終わる印象があるが、ごく初期の「カラマリ・ユニオン」でも「エイラ」に夢破れた二人のフランクがエストニア目指して小舟をこぎ出していくシーンで終わっていた。そしてこれらの船出はなぜか前途洋々たるものを感じさせないのだ。むしろもの悲しい。きっと彼の地でもまた、やるせないせつない辛苦の営みに温かみを求める日々が待ち受けているだろうなあと予感させるものがある。

「パラダイスの夕暮れ」1986年、監督・脚本:アキ・カウリスマキ、製作:ミカ・カウリスマキ。労働者三部作一作目。マッティ・ペロンパー(ニカンデル)、カティ・オウティネン(イロナ)、サカリ・クオスマネン(同僚で友人)。労働者三部作一作目
ゴミ清掃職員のニカンデルとスーパーのレジを解雇となったイロナの恋物語。二人を乗せて港を出ていく船にはソ連のマークがあった。
切ない恋の物語であるとともにペロンパーとクオスマネンのごくさりげない友情の物語とも見える。
これがカウリスマキ作品群のある意味出発点となるといえよう。マッティ・ペロンパーとカティ・オウティネンの共演で初々しい切ない恋を抑制的に描いていて美しい。ペロンパーとオウティネンはカップル役として何度も共演しているのかと思ったらこれと「愛しのタチアナ」の2作だけなのだ。ペロンパーの早すぎる死が残念だった。

「真夜中の虹」1988年、監督・脚本:アキ・カウリスマキ。労働者三部作二作目(負け犬三部作第1作)。出演:トゥロ・パヤラ(カスリネン)、スサンナ・ハーヴィスト(イルメリ)、マッティ・ペロンパー(ミッコネン)。
鉱山廃坑に伴って失業したカスリネンと、食肉工場で働くシングルマザーのイルメリ、脱獄をともにするミッコネン。最後に暗い埠頭からメキシコに向けて船は出てゆく、「オーバー・ザ・レインボウ」に乗せて。

「レニングラード・カウボーイズ・ゴー・アメリカ」1989年。監督:アキ・カウリスマキ。出演:マッティ・ペロンパー、ザ・レニングラード・カウボーイズ 。ハチャメチャにはじけようとするのに毛皮のコートと頭が重くてどうにもなりません、みたいなおかしい映画だった。

「マッチ工場の少女」1990年。監督・脚本:アキ・カウリスマキ。労働者三部作三作目(負け犬三部作第2作)。出演:カティ・オウティネン(イリス)、エリナ・サロ(母)。
マッチ工場で働き母と義父の世話をする孤独なイリスは、ダンスホールで出会った男、義父から踏みにじられ殺鼠剤を盛る。とても救いのないストーリーだった。カティ・オウティネンは若い時から老成した顔立ちだが、それでも瑞々しい表情がかわいらしかった。天安門事件を報じるニュース映像が興味深かった。

「コントラクト・キラー」1990年。監督・脚本・製作:アキ・カウリスマキ。負け犬三部作第3作。出演:ジャン=ピエール・レオ(フランス人アンリ)、マージ・クラーク(花売りマーガレット)。舞台はロンドンでセリフも英語であるせいか、ちょっと雰囲気が変わっている。

「ラヴィ・ド・ボエーム」1992年。監督・脚本・製作:アキ・カウリスマキ。出演:マッティ・ペロンパー (画家ロドルフォ)、アンドレ・ウィルム(作家マルセル)、カリ・ヴァーナネン(作曲家ショナール)、イヴリヌ・ディディ(ミミ)。
三人の男たちのボヘミアン生活とロドルフォの恋人ミミの暮らしを白黒映像で描く。経済学者の父ヨルマ・カウリスマキに捧げられた。舞台はパリ ※かわいい三輪自動車はリライアント・ロビン。

「愛しのタチアナ」1994年。監督・脚本:アキ・カウリスマキ。出演:マッティ・ペロンパー(整備工レイノ)、カティ・オウティネン(エストニア人タチアナ)、マト・ヴァルトネン(仕立て屋ヴァルト)、キルシ・テュッキライネン(ロシア人クラウディア)。マッティ・ペロンパー遺作となる。

「浮き雲」1996年、監督・製作・脚本:アキ・カウリスマキ。敗者三部作第一作。出演:カティ・オウティネン、カリ・ヴァーナネン。マッティ・ペロンパー(1995年死亡)に捧げられた。
次から次に災厄に見舞われながら決してくじけない。最後の最後がハッピー・エンドとなる。

「白い花びら JUHA」1998年。監督・脚本・製作:アキ・カウリスマキ。原作:ユハニ・アホ。出演:サカリ・クオスマネン(ユハ)、カティ・オウティネン(マルヤ)、アンドレ・ウィルム(シュメイッカ)、エリナ・サロ(シュメイッカの姉)。白黒・無声映画。
これもまたせつない愛の話だ。ペロンパーとは全然違うがクオスマネンもカウリスマキの映画には欠かせないキャラクターだ。

「街のあかり」2007年。監督・脚本・製作:アキ・カウリスマキ。出演:ヤンネ・フーティアイネン(警備員コイスティネン)、マリア・ヘイスカネン(ソーセージショップのアイラ)、マリア・ヤンヴェンヘルミ(悪党の女性ミルヤ)、イルッカ・コイヴラ(悪党)。
そしてこれもまたせつない愛の話だ。オウティネンはスーパーでレジを打っている。

こうしてみているとカウリスマキの作品はどれも気持ちの奥底からふるえるように切ないひたすらな愛の物語だ。役者たちは言葉少なに、表情もあまり変えずに淡々と演じきる。それを描く監督の懐深い愛情が観る者の心を暖かくすると思う。
Youtubeでオウティネンの短いインタビューをみると、カウリスマキの作品のセリフは「昔のフィンランド語で現代のフィンランド語とは違う厳格なリズムを持っている。今の若い人たちは使わないような言葉です。そういう古いセリフの言葉づかいは練習します」と言っている。
カウリスマキは小津に影響を受けたと読んだことがある。小津の作品も人形浄瑠璃のように役者が演じる型を積み重ねていくような印象があるが、カウリスマキはさらに言葉少なに記号的な型を組み立てているように見える。
古い厳格なリズムを持つフィンランド語とはどういうものなんだろう。

小津の映画でも原節子は今の若い人たちは決して話すことのないような古い女言葉を話す。1950年代の若い女性はこういう話し方をしていたのだろうか。
「お母様、わたくしを買いかぶってらしたんですわ。」
「いいえ、わたくしそんな、おっしゃるほどのいい人間じゃありません。」
「わたくしずるいんです。ずるいんです。そういうこと、お母様には申し上げられなかったんです。」

オウティネンが表情を殺して話す古いフィンランド語はこんな感じかしら。。。五七調のようなリズムがあったりするのかしら。。
聴き知らぬ言葉なので何とも言えないが、知らないゆえに普通に喋っているように聞こえるのが残念だ。




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by e3eiei | 2015-01-05 01:17 | 見聞 | Trackback | Comments(0)
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